[Bianchi]カウンターヴェイルから垣間見える Bianchiの剛性と快適性のプライオリティ

Bianchi・Oltre Xr4 Disc Impression

スポーツバイクはもとより、実用車風のタウンサイクルであっても、ビアンキの自転車はとにかく“好感度”が高い。主な人気の理由は“チェレステ”と呼ばれる、緑とも青とも言えそうなオリジナルカラーにある。車種を問わず、街でも自然の中でも生えるという不思議な色だ。だが、魅力はコスメティックだけに留まらない。創業は1885年、ミラノのヴィア・ニローネ7番地にE・ビアンキが自転車店を開いたのが始まりで、現存するブランドの中ではもっとも歴史が長い。

Photo/Takuji Hasegawa

レースにしても然り。今年のジロでP・ログリッチが活躍したのも記憶に新しいが、F・コッピ、M・アルゼンティン、G・ブーニョなどのイタリア人世界チャンピオンをはじめ、輝かしい戦績は枚挙に暇がない。また、近年(2013年以降)はカウンターヴェイルという特殊な振動吸収特性に優れた繊維をフレームに使い、先進性と独創性が評価されて入門者からマニアまで高い人気を誇っている。

OLTRE XR4 DISC”は空気抵抗の低減を図ったオルトレファミリーの最高級モデルだ。低めに接合されるシートステーや、シート周りのデザインはオーソドックスなものの、サイドビューが美しい。その理由はフレームだけでなく、総合的に設計されているからだ。たとえばヘッドチューブは“Vison・5D”のハンドルセットを前提にデザインされ、フレームとハンドル部に一体感がある。また、ホイール固定用レバーがアクスルに格納されるなど、トータルパッケージで質を向上させている。こういう芸当は規模が大きなブランドの優位なポイントであり、美しいフォルムの秘密でもある。

ペダルに足を置いて、スッと走らせてみる。レーシングバイクは低速が苦手だと思われがちだが、そうとも限らない。オルトレのように低速でも快適性を十二分に持つモノもある。データをみると如実に分かるが、カウンターヴェイルの素材特性には目を見張るものがある。振動の収まりが早ければ、それは疲れにくく快適性が高いということ。凹凸を越えるとき、手の中で小気味よく弾かれたハンドルは“コクッ、コクッ”と振動を吸い取る。しなって振動をいなすのではなく、余韻を残さない。これは高級車独特のものであり、高弾性素材のフレームを上手に組み上げたときに得られるものだ。もう少しマイルドな乗り心地を望むなら、空気圧を少し低くしてやれば、大きな凹凸に対してフワッとした反動が出るようになるので、エンデュランスバイクのようになるし、そういうセッティングも悪くない。

上はスチール素材の振動分析。下はカウンターヴェイル。

きついヒルクライムで知られるジロ・デ・イタリアでログリッチが使っていたことからも想像できるだろうが、オルトレは長い距離の峠も苦としない。下りのハンドリングにしても安定しており、高速コーナーからヘアピンコーナーまでまったく苦にしない。かなりハードにブレーキングしても、デュラエース+160㎜ローターで発生する制動力をバシッと受け止め、フォークブレードやクラウンが弱音を吐くこともなく、思いのままに制動力が立ち上がってくる。エアロバイクというと、平地を速く走るイメージがあるが、オルトレの場合は高速チューンのバイクという感じだ。そして、高性能化するエアロバイクの中で突出した性能といえば、やはりカウンターヴェイルがもたらす快適性の高さだろう。

速いだけのバイクは珍しくもない。だが、、乗り心地が悪いと疲れやすいし、コーナーも楽しくない。ゴール前で疲れているようなバイクではレースで勝てないし、ロングライドでも自分の限界に挑戦したところで記録が伸びるわけがない。ここ数年で快適性の重要さが語られるようになったが、ロードレースやロングライドなら高剛性よりも、高快適性のほうがいいに決まっている。もっとスタイリッシュなデザインなバイクもあるし、もっと軽いエアロバイクも、もっと高剛性なフレームだってある。でも、エアロバイクとしては特別に、エンデュランスバイクと比べると“ほどほど”に快適さを感じるバイクも珍しい。歴史、伝統、個性、高性能と4大要素がここまで足並みを揃えられるのは、唯一無二の存在と言えるだろう。

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