セラサンマルコのルイジ・ジラルディが語る 最新サドルのトレンド Takehiro Kikuchi

 

Selle San Marcoのルイジ・ジラルディはイタリア自転車界を語る上で欠かせないキーパーソンだ。1935年に創業し、80年以上に渡る歴史を持つサドルメーカーの三代目であり、3人の兄弟と共に先祖から受け継いだ会社を支えている。ロードバイクの快適性を語る上でサドルは最重要パーツの1つであり、“世界で自転車の快適性に影響を与える100人”というランキングがあれば、間違いなくルイジは上位ランカーである。その彼に現在のサドルのトレンドについて語ってもらった。


早速ですが、サドルの最新トレンドは?

ルイジ

   ルイジ・ジラルディ

 

いろいろありますが、近年、多くのサドルを作るブランドが生まれました。それぞれが独自のデザインを投入し、ユーザーにとってはサドルの選択肢が拡がりました。ただ、それがライダーに新しい迷いを生じさせた面もあり、クラシックな有名モデルへの回帰現象も起きました。

わざわざ古いサドルを選ぶんですか?

ルイジ

サドルにもピンからキリまでありますが、サンマルコのユーザーはコストよりもパフォーマンスを優先する人が多いのが特徴です。食事に例えるなら、グルメとか食通と呼ばれる人たちですね。彼らは新しいレストランの発掘にも熱心ですが、迷ったときにはミシュランの三つ星レストランを選びます。リーガルやコンコールはパフォーマンスと快適性が保証されているレストランなのです。

           サンマルコを代表する定番モデル。ロールス(左)、リーガル(中)、コンコールプロファイル(右)

どうして、多くのブランドが誕生したんですか?

ルイジ

残念ながら、快適性やパフォーマンスにおいて真に革新的なモデルは登場していません。サドルの評価は人それぞれです。性格や容姿に個性があるように、お尻の形やペダリングスキルも千差万別。また、ソファーやビジネスチェアーの良し悪しが数値で表現できないように、サドルの性能もスペックだけで表現しにくいのです。

では、デタラメな製品もありますか?

ルイジ

私には理解しかねる製品もありますが、作った人のお尻には合うのかもしれません。好みの問題ですから、絶対という表現は使うべきではないでしょう。毎年、新しいレストランは数えられないほど誕生していますが、名店や老舗となる店はほぼありません。サドルメーカーにしても、数多くのブランドが誕生しましたが、50年以上の歴史を誇るブランドは指で数えるほどです。

ユーザーの求める嗜好性に変化はありませんか?

ルイジ

もちろん、あります。スポーツ・サイクリングがより快適に、ピュア・レーシングだけではないものを求めるようになりました。

話は変わりますが、フィッティングサービスや自転車の流行もサドルに影響を与えていますか?

ルイジ

ええ、ライダーの目的に応じて、それぞれにふさわしい細かなポジションの設定が行われるようになりました。これはとてもいいことですね。また、ショート・サドルの流行はフィッティングサービスの影響だと思います。ただ、あの形状は最近になって誰かが発明した訳ではなく、1990年代にUCIのタイムトライアル・ルールに合わせるために生み出されたものです。

サンマルコもショートサドルを出しましたよね?

ルイジ

これはサイクリストたちへの新しい回答です。今年中に「レーサー」向けのショートフィット・コンセプトも導入します。よりエアロダイナミックなポジション、よりリラックスしたペダリングができる工夫を行ないました。それらの叡智を集めて開発したのがショートフィットCです。クラシックな形状のサイドパネル、全面にたっぷりと入ったパッド、股間部に圧迫をかけないための大きなカットアウトという要素を1モデルで実現しました。

 

   サンマルコの最新技術が投入されたショートフィットC

全長の短いサドルに交換すると、前後位置のセッティングが従来と異なりますよね?

ルイジ

いいえ、心配はいりません。 人間工学に基づいて設計されたアナトミック・エリアが広いため、むしろ取り付け位置の設定は自由度が増しています。ライダーの好みの位置、そして走行中にどのようにポジションを変化させるかによって自由に設定して下さい。ただし、本当のレーサーの場合、アスピデ・スーパーレジェッラのような究極のパフォーマンスモデルを好むこともあります。したがって、やはり一概に良し悪しを決められないのです。

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